上司もおらず階級も存在しないフラットな組織である「ホラクラシー」。世界各国で近未来の新しい組織スタイルとして注目を集めています。ただし、日本では参考事例が少ないこともあって、聞きなれないという方も多いです。そこで今回は、ホラクラシーについて詳しくまとめてみました。
ホラクラシーとは?
ホラクラシーとは、上司や部下という立場や階級が存在しないフラットな組織の管理体制です。日本で組織と言えば、中央集権型・階層型のヒエラルキー組織が一般的ですよね。ホラクラシーは、ヒエラルキー組織とは対照的な分散型・非階層型の新しい組織形態として注目されています。
ホラクラシーは、2007年に米国のソフトウェア企業の創設者であるブライアン・ロバートソン氏がまとめた公文書によって浸透したと言われています。その後、欧米の企業やNPOに徐々に採用されるようになり、現在では、アメリカやフランス、オーストラリア、イギリスなど世界各地で導入されるようになりました。日本でも、ダイヤモンドメディア株式会社などが、ホラクラシーを実施しています。
それではメリットとデメリットを中心に、ホラクラシーの特徴を見ていきましょう。
ホラクラシーの3つのメリット
メリット① 生産性の向上
従来のヒエラルキー組織に慣れている人からすると、役職者がいないフラットな組織は「サボる人が出るのではないか?」「いざという時に責任が取れないのでは?」など、疑問が生じることもあると思います。しかし、肩書や役職による従属関係が発生せず、皆平等で各人がそれぞれの役割に集中できることから、むしろ生産性が向上しやすいです。「人を管理すること」ではなく、「仕事をすること」に集中することができます。個人が主体的な行動をとることで組織が存続しますので、モチベーションも上がり、いざという時も各人がしっかり個々の責任を果たす可能性が高いのです。
メリット② ストレス軽減
上下関係がないことで、ストレスが軽減されます。上司の顔色を伺ったり、出世の為の社内政治に勤しむ必要がないことも特徴的です。無用な付き合いをする必要がなくなり、より自由かつオープンに仕事をすることができます。
メリット③ スピーディーな意思決定
ヒエラルキー組織では、意思決定に際し上司の許可を取らねばならず、どうしてもスピードが遅くなりがちです。対してホラクラシーでは1人1人が意思決定権を持っているので、スピーディーな意思決定ができます。コミュニケーションも活性化され、チームプレーで協力しながら仕事をすすめることができるようになるのです。会議では多様性のある意見がでることも期待できます。
ホラクラシーの3つのデメリット
デメリット① 馴染めない人がいる
ホラクラシーには良さもありますが、従来型の組織に慣れている人の中には馴染めない人がいることも事実です。幼少期から自立心を重視する教育を実施しているアメリカと違い、日本では集団行動による教育が尊重されています。子供の頃からリーダーの指示に従って動くことに慣れているので、いきなり導入することは現実的に厳しいという声も多いです。中には、ホラクラシーは「マネジメントの放棄」にあたるという批判も存在します。
デメリット② 各人の行動把握が困難
ホラクラシーは基本的に社員を信頼することで成り立っています。全員の細かい行動まで把握することは困難です。その為、パフォーマンスが下がるという意見もあります。機密情報のコントロールが難しい点も課題点と言えるでしょう。
デメリット③ 急激な規模増加ができない
ホラクラシー型の組織に人が馴染むまでには時間がかかります。その為、急激な規模増加ができない点もデメリットです。時間をかけてじっくり人を育てる力が組織に求められます。もしトラブルが生じた時は、リーダーが解決するのではなく各個人が対応することになるので、結果的に各人の負担が増すという見方もあるのです。
ホラクラシーには向き不向きがある
メリットやデメリットを見ればわかる通り、これまでにない画期的な形態ではありますが、導入できるかどうかは組織によると言えます。主体的で責任感が強く、セルフマネジメントが得意という社員が多いのであればホラクラシー型組織が合っているでしょう。反対に、ヒエラルキー型の組織に馴染んでいる社員が多い企業への導入は難易度が高いです。スタートアップ企業などは積極的に導入しても面白いでしょうが、もしヒエラルキー型の組織で上手く機能しているというのであれば無理に導入しなくても良いのかもしれません。
ホラクラシーを実践している企業
ダイヤモンドメディア株式会社
日本でホラクラシーを実践している代表的な企業がダイヤモンドメディア株式会社です。2008年の創業当時からホラクラシー組織として機能しており、その徹底ぶりは群を抜いています。上司部下という概念がなく社員はメンバーと呼ぶことや、財務情報を全部オープンにしていること、給料はみんなで決めるなど、他に類を見ないユニークな取り組みが話題です。ただし、社長の武井浩三さんはヒエラルキー組織にも理解を示しており、「ヒエラルキーもホラクラシーも共存するもの」と語っています。ダイヤモンドメディアにとっては、ホラクラシー型の組織が合っていたということでしょう。日本でホラクラシーを実践したいと考えている企業にとって大いに参考になります。
取り組み事例
・みんなの給料はみんなで決める
・起業、副業を推奨
・肩書きは自分で決める
・雇う雇われるの概念が無い
・上司部下の概念が無い
・メンバーの社内外ボーダーレス化
・経費の清算は個人の裁量
・財務情報は全部オープン
・働く時間、場所、休みは自分で決める
・代表、役員は選挙と合議で決める
・明文化された理念が無い
・採用する前に仕事をする
Zappos(ザッポス)
Zapposは米国の大手ネット通販会社です。2009年から「フォーチュン」誌が掲載する「最も働きがいのある企業100社」にランキングしています。ホラクラシーは2013年頃に同社位導入されたのですが、当時は反対した社員210名が退職したことでも話題を集めました。知名度が高く影響力が大きいZapposが導入したことで、ホラクラシーに目を向ける企業が増えたことも功績と言われています。
Airbnb
宿泊場所マッチングサイトとして世界的な人気を誇るAirbnbもホラクラシーを導入しています。同社ではマネージャーと言う存在はいますが、あくまで従業員がより円滑に業務を行うためのお手伝いさんという位置づけであり、マネージャーのサポートを受けつつも、各従業員が自主的に仕事を行っていることが特徴的です。1人1人が働き方をデザインできる企業として、サービスとともにさらに人気を集めています。
部分的に導入して見る方法も有効
ホラクラシーという形態は魅力的ではありますが、いきなり導入することは厳しい側面があります。興味がある場合は、部分的に導入してみる方法を試してみても良いでしょう。徐々に導入範囲を広げることで、社員に負担をかけることなくホラクラシー型組織に移行できる可能性は高いです。一昔前ですと限られた一部の企業しかホラクラシーを実践していませんでしたが、現在では日本でも少しずつ導入する企業の数が増えてきています。前例を参考にしながら部分的に導入することで、硬直化した組織体制に風穴をあけることができる場合もあります。
まとめ
ホラクラシーは、役職による従属関係ではなく、役割を果たすことに集中できるフラットな組織形態です。生産性が向上し、ストレスが軽減されるなど様々なメリットがありますが、反面導入には時間がかかるなどの課題点もあります。日本でホラクラシーを実践しているダイヤモンドメディア株式会社などの事例を参考にしながら、部分的に導入していく方法も有効でしょう。うまく機能するようになれば、これまで以上の成果があげられるようになる可能性もあります。
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