巷で話題の「パラレルキャリア」、華やかな語感とは裏腹に仕事以外の2枚目の名刺で苦しむ人もいます。
人脈が作れる、退職後の収入源になる、副収入が得られる。
そんな魅力的なフレーズに魅せられてパラレルキャリアの世界に飛び込んでみたけれど、思い描いた理想とは程遠いタイムマネージメントと体力の壁。
今回は「パラレルキャリア」の理想と現実をご紹介します。
「誰でも持てる二枚目の名刺」のキャッチフレーズのウラ側をお見せしましょう。
パラレルキャリアの勘違いその1:副業ではない
パラレルキャリアを始める際に、最も多いであろう勘違いのひとつ。
「パラレルキャリアで副業を始めよう」
これは間違いです。
そもそも、「パラレルキャリア」と「副業」(パラレルワーク)は別物です。
パラレルキャリアが提唱されたのは、1999年に経営学者のP.F.ドラッカー氏が発表した著書『明日を支配するもの』が最初とされます。
著書の中でドラッカー氏は、「これからの社会における生き方の1つであり、働くということに対する考え方であり、本業を持ちながら、第二の活動をすること」と述べています。
「働くということに対する考え方」というあたりで既に副業とは違います。
そして、「第二の活動」の内容として、ドラッカー氏は「第二の活動の定義は緩く、ボランティア活動など非営利団体への参加や別企業への就職、自営業の開始など幅広い活動もパラレルキャリアである」としています。
パラレルキャリアは、本業(メイン)に対する副業(サブ)ではないのです。
パラレルキャリアとは、ドラッカー氏の言葉によれば、「ボランティア活動など非営利団体への参加」も含まれ、単に収入を得る事が目的ではありません。
パラレルキャリア(parallel career)のパラレル(parallel)は、『平行』や『並列』という意味を持ちます。そして、キャリア(career)は『経歴』という意味です。
つまり、パラレルキャリアとは『複数の経歴を平行して磨く』と捉えるのが正解なのです。
パラレルキャリアの勘違いその2:スキルが無くても始められる
「今は資格がないけれど、スキルアップしてキャリアを積みたい」
これも勘違いです。
キャリアのない人に仕事や依頼は集まりません。
あなたはフラワーアレンジメントを習いたての人に、お金を払ってウェディングブーケを頼みますか?
初心者マークを付けたクルマの助手席で安心していられますか?
何かを人に依頼する時、スキルのある人、信頼のおける人にお願いするはずです。
「スキルアップしてキャリアを積みたい」自体は間違いではありません。
スキルがある人が時間を掛けてキャリアを積んでゆくのが本来の姿です。
資格や免許・認定証は目に見えますが、その人のスキル(実力)までは見えません。
パラレルキャリアで何かを始めるなら、周囲の人に認めてもらうための「証し」が必要です。
その証しが資格なのか実績なのかは、パラレルキャリアを始めるフィールドによって異なりますが、人が信頼して任せられるような「見えるスキル」を目指すべきです。
パラレルキャリアの勘違いその3:好きな事だから始める
「スキルが有るか無いかよりも、本当に自分がやりたいことを始める」
スキルも無い状態で、しかも好きだけでは信頼されません。
パラレルキャリアは「信頼関係」という人脈の上に成り立つものです。
本来の仕事(本業)があるのに、好きという理由だけでパラレルキャリアを始めても人脈がなければ誰からも依頼は発生せず、本業も「好きではない」という理由から疎かになってします。
好きな事=やりたい事をどれも諦めない生き方には、常に責任が伴います。
パラレルキャリアは、「信頼関係」があってこそ成り立つものです。
パラレルキャリアを周囲に認めてもらうためには、本業にもフルタイムで最大限にコミットしているという自他ともに認める実績が必要です。
実績とは、求められる成果を出す事です。実績がないと信頼は崩れてしまうでしょう。
好きだからは、始める大きなモチベーションになります。しかし、好きだからだけでは長く続きません。
本気でパラレルキャリアをスタートしたいなら
ここまでパラレルキャリアを始めたい人が陥りやすい勘違いや落とし穴をご説明しました。
それでも、パラレルキャリアには現状に満足感を得られない人には魅力的な生き方に見えるでしょう。
そこで、本気でパラレルキャリアをスタートしたい、あなたのためにパラレルキャリアのための心構えをいくつかご紹介します。
好きだから始めて、途中で諦めないための心構えです。
本業との比重を考える
パラレルキャリアを始めると、あれもこれもやろうとかなり無茶をして、朝から晩まで分刻みのスケジュールを詰め込みがちです。
好きで始めた事ですから、ある程度は辛抱出来るでしょう。しかし、そんな生活リズムでは長続きしません。
「やりたいこと」、「すきなこと」があるなら、まずはやってみて、時間や体力的に難しいと思ったら、「すきなこと」の比重を落としてみるのもいい。
本業と副業で例えるなら、どこかのタイミングで本業か副業のどちらかの仕事量が大きく増えるタイミングがあります。
本業と副業の両方を一人でこなそうとしても1日は24時間しかありませんから、なんでやってやろう、とは無理な状況で結果、睡眠時間を削るしかありません。
本業との比重を考えれば、最優先すべきは自身の健康です。
タイムマネージメント能力を身に付け、健康な生活を無理なくおくれるパラレルキャリアをスタートして下さい。
無償ではじめる
最初に「パラレルキャリアは副業ではない」とご説明しました。
副収入を得るのが目的ではありませんから、パラレルキャリアのスタート直後は無償、報酬を求めずに始めましょう。
「無償では得るものがない」というあなたは間違っています。
無償でもあなたのスキルに対して、周囲からの「信頼」が得られます。
信頼は人脈と実績を生み、それが正当な対価・報酬へと変わるのに時間はかかりません。
パラレルキャリアとは、先のドラッカー氏の言葉にもあり通り、「第二の活動の定義はボランティア活動など非営利団体への参加」も含まれます。
現実の例として、電機メーカー勤務とNPO団体のパラレルキャリアで世界の貧困対策に動いている女性もいます。
また、海外だけでなく地域ボランティアとして地方創生や街興しなど、パラレルキャリアで活躍出来るフィールドはたくさんあります。
収入や肩書に囚われない新しい働き方ととらえれば、パラレルキャリアのスタートは無限の可能性があります。
本業へのフィードバックを考える
経済学者であるドラッカー氏がなぜ「第二の活動」であるパラレルキャリアを提唱したのか?効率を考えたら体力・時間といった資産を本業に集中させるべきではないか?
その疑問の答えは、パラレルキャリアが持つ意味にあります。
本業以外のフィールドで本業とは別のスキルを発揮・習得する事で、人脈が広がりあなた自身のスキルも向上します。
そのスキルとは、マネージメント能力であったり語学力であったりするでしょう。せっかく習得したスキルを本業に活かさない手はありません。
パラレルキャリアで得たスキルを本業にフィードバックすることで、本業での評価が上がり、結果として昇給・昇進につながる可能性もあるのです。
そうした、本業への好影響を考えて経済学者であるドラッカー氏は「第二の活動」であるパラレルキャリアを提唱したのです。
パラレルキャリア・まとめ
パラレルキャリアに関する落とし穴、勘違いの説明に始まって、パラレルキャリアのための心構えまでご説明しました。
誰もが簡単にパラレルキャリアをスタート出来るとは限りません。
しかし、始めなければ何も始まらないのです。
サントリーの創業者・鳥井 信治郎の口癖です。
「やってみなはれ」
まずは第一歩を踏み出してみましょう。
パラレルワーカー
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