複業(パラレルワーク)

パラレルワークが家庭を救う?!これからの中高年の生き方

2018年5月6日プレジデントオンラインの記事です。
「管理職の残業漬けは「妻の命令」だった」

この記事によれば、日本総研の「中高年男性社員の意識調査」(2017)によって、中高年男性がなぜ、残業を繰り返してまで今の会社に勤め続けることに固執するのか、その理由が「妻の要望である」のだそうです。

一見、中高年男性の悲哀に通じてしまいそうな話ですが、しかし本当にそうなのでしょうか?パラレルワークがそこにどんな影響を与えるかも含めて、そのあたりを見ていきましょう。

夫は妻の奴隷なのか!?

夫が働くのは妻の要請ためである

この記事で注目すべきなのは、夫がひとつの会社に勤め続ける理由が妻の要請であるということです。

日本総研の今回の調査では、夫がやりたいことをすればいいと答えた人は全体の約20%に過ぎず、ほぼ半数が現在の仕事を続けてほしいと回答しているのです。そして、勤務先を変えてもいいが長く働いてほしいが約16%、勤務先を変えていいが給与水準を上げてほしいが14%となっています。

そう、これによってわかることは、これまで中高年の人たちが、残業や不当な労働条件化においても、岩にかじりついたように会社に尽くしていくその理由が、妻の要請にあったということです。

働く理由は「生活の糧」

そして、妻がそのように夫に対して感じている原因が「生活の糧」。

記事によれば、回答の中で「妻から働き続けてほしい」と要請されている人の8割が、その理由を「生活費を稼ぐこと」と答えているそうですから、それは間違いのないことでしょう。

つまり、夫は妻に対して、生活における経済的な責任を一身に背負い、そして、その結果、自由に働くことを制限されているということです。

一見奴隷のように見える

ここまでの記事を読めば、まるで夫は妻の奴隷のように思えます。

夫は妻と自分の(もしくは家族の)生活上の経済的な責任を一身に背負い、労働条件の優劣に関わらず、現在の仕事にしがみついていなければいけない。

そう、それがブラック企業であろうが体質の古い企業であろうが、サービス残業まみれの企業であろうが。夫は妻の要請によって、転職することなど許されず、仮に転職したとしても、長く働けるところか、もしくは今より高い給料をもらえるところしか許されない。

そんな、中高年にはかなりハードルの高い転職しか許されないのです。そんな事実だけを見ていけば、夫は妻の奴隷であり、労働者からの搾取は妻によって行われていると思われても不思議ではありません。

旧態依然とした価値観はむしろ家庭にこそある

家事参画と妻の要請

しかし、実は夫は妻の奴隷とも言い切れない結果も出ています。

というのも、同調査においては同じような要請の割合の家事分担の割合ごとに調査しているのですが、それによれば、家事分担の割合が低ければ低いほど、働き続けてほしいという要請が強くなっている結果が出ているのです。

具体的には家事分担割合が20%未満の男性だと「働き続けてほしい」と考える妻は「好きなことをやればいい」と考えている妻よりも多く、逆に家事分担割合が80%を超える場合「好きなことをやればいい」と思っている妻の方が多くなると出ているのです。つまり、妻による要請は、家事割合が少ない夫に対しての要請だといえるのです。

家事をしない夫が悪いのか

こうなってくると、家事をしない夫に問題があるように思えます。

というのも、家事分担割合が多ければ多い程、妻は夫の自由にやってほしいと思っているということなのですから、妻の要請は仕事にかまけて家事を顧みない事への対価ともいえるからです。

確かにそう考えれば、ある程度納得は行くでしょう。夫が家事労働に対して大きな働き手として存在しないのであれば、せめて、経済的責任において行われる外での労働は安定的な経済的支援になってほしい。こう考えるのは、無理からぬことだからです。

しかし、それは本当に夫の責任だけといえるのでしょうか。

働かない妻が悪いのか

では、一方妻の方はどうなのか。家事分担割合が80%を超えるということは、この場合ほとんど妻は専業主婦か、パートやアルバイトをしていると考えていいでしょう。

つまり、常識的に考えて家事を8割負担できるということは、妻が就職している可能性は低いわけです。そう考えてみれば、妻が家にいるのではなく外で積極的に働いていれば、家事分担は自然とその割合を増し、経済的責任も夫一任ではなく分担して行えるということになるはずです。

つまり、非常にうがった考え方をすれば、専業主婦として家にいて、自分は外で働いていないのに、夫にはとにかくできるだけ長く転職せずに働けといっている、とみることもできるのです。
そうなるとがぜん、妻の方が悪くなってきますよね。

家庭に巣くう旧態依然とした価値観

しかし、夫にしろ妻にしろ、ここには大きな価値観の壁というものがあると考えられます。つまり、「夫は外で働き家事は妻に任せるものだ」という夫の価値観と、「妻は家にいて夫が外で稼いでくるものだ」という妻の価値観です。

じつは、この旧態依然とした価値観こそが、この問題の根底にあるといっていいでしょう。

つまり、家庭を顧みない夫が悪いのでも、夫に責任を負わせることが当たり前だと感じる妻が悪いのではなく、この旧態依然とした価値観がいまだに「価値」を持っていることがいけないのです。

もちろん、そんな生き方を選択することがいけないというわけではありません。そうではなく、そんな生き方を当たり前だと感じている人が大半という事態だからこそ、このような調査結果出るという事実が問題なのです。
そんな事実を生んでしまう、旧態依然とした生き方の価値が高すぎることが問題だということなのです。

中高年も自由に働きたい

中高年はそれでもいいと思っているのか

しかし、この話も、中高年の男性自体がそれでもいいと思っているならば、意味はありません。

ところが記事によれば、同調査において、中高年男性の5割は働くことの意義として「自分の能力やスキルを活かすために働くことが重要だ」「自己成長のために働くことが重要だ」と答えているとあります。

つまり、中高年の男性も、自由に自分を生かす働き方をしたいと思っていいて、それが正しいことなのだという認識を持っているということなのです。

しかし、いまだにそうすることはできてはいません。それは、妻の要請によって今の仕事にしがみついている人が5割を超える事実を見れば一目瞭然です。

なぜ、このような結果になったのか

であれば、なぜ、このような結果になってしまったのか。それはやはり「旧態依然とした価値観」の持つ、普遍的な価値を持っていると思わせるに足る、その歴史の積み重ねなのでしょう。

今の中高年にとって、家族や家庭の在り方というのはもはや、刷り込みに近いものです。

小さいころから見てきた親の姿、アニメやドラマに見る当たり前の家庭の形、社会の要請、先人の忠告、そして結婚したときに交わした約束等々。旧態依然とした価値観を盤石にするあらゆるものが、彼らの周りにはあり続けたのです。

パラレルワークの真価はここに発揮すべきである

パラレルワークの価値

そこで見直されるべきなのが、パラレルワークの価値です。記事においては、副業や兼業というものが働き方改革で活発になれば、と、その展望を見ていますが、しかしそこから一歩進めて複業について考えればもっとそこには光明が見いだせます。

そう、パラレルワークを実践すれば、そこには何の問題もなくなるのです。これまで何度も説明してきたように、パラレルワークは働き方ではなく、一人の人間が複数の自己実現の道を持つという生き方の選択です。

そしてそれは、あらゆる選択肢の中に存在しています。

仕事と家事労働これも立派なパラレルワーク

家事労働は仕事ではない。

そんなあまりに乱暴で原始的な考え方を持っている人はいないでしょうが、いうまでもなく家事労働も立派な仕事の一つです。であるならばそれは、パラレルワークの一つの選択肢になりえるはずです。

つまり、家事労働をしながら働く、もっと言えば家事負担割合を増やしながら働くという、いわゆる仕事と家庭の両立というのは、言い換えればパラレルワークそのものなのです。

であれば、夫と妻がともにそんな家事と仕事の両方をこなすパラレルワーカーとなれば、問題は解決します。これにはリモートワークや在宅フリーランスへの理解が深まれば、造作もないことでしょう。夫はこれまでの仕事をリモートでこなし家事と両立させるパラレルワーカーとなり、妻は家事をこなしながら在宅フリーランスになるなどという生き方は、働き方改革の進展いかんでは無理な話ではないのです。

夫の自由をパラレルの中で見つける

また、働き方改革で副業界隈の規制が緩くなれば、こういう選択肢もあります。それは、夫の働き甲斐や自由な生き方への欲求を、仕事をやめることなく、これまでの仕事と自分のスキルを活かし生きがいを感じるような仕事とを両立することで果たす、という手です。

これであれば、経済的な低下は最小限に抑えることができますし、うまくいけば収入は増えます。それどころか、パラレルワークを続けていく中で、元の給与に見合う、もしくはそれを超えるような給与で、新しく見つけた選択肢一本に絞ることもできます。これならば「生活の糧」を重視する妻の要請も、自由な生き方を実現しながらこなせていけるはずです。

パラレルワークで価値観を変革させる

中高年男性がひとつの仕事に固執するのは妻の要請である。そんな、ショッキングで悲哀を感じるような記事からいろいろ考えてきましたが、そこにあったのはむしろ中高年男性の悲哀ではなく、旧態依然とした価値観の弊害でした。

しかし同時に、そこには、働き方改革という社会の一大転換期の中で、パラレルワークというものを通じて変えていけるかもしれないという希望もあるのです。

もちろん、長年培ってきた価値観は一気に変わることはないでしょう。しかし、パラレルワークという「選択肢」をたくさん持てる働き方に挑戦していけば、その選択肢の中に「旧態依然とした価値観の崩壊」が選べるはずです。

そしてその先には、夫婦という関係そのものが、従属や依存ではなく、両立や相互扶助の関係へと昇華する道筋が見えてきます。日本における働き方改革とは、そういう、家族関係すら変え得る大きな一大転換のプロセスでもあるのです。

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