複業(パラレルワーク)

複数の収入源を持つ時の注意点

厚生労働省の統計によると、正規雇用労働者は、平成26年までの間に緩やかに減少していましたが、平成27年については8年ぶりに増加に転じ、平成28年も増加しました。それでも、労働人口の37%以上は、非正規雇用労働者です。約4割が非正規雇用で働いており、その非正規雇用労働者約2,000万人のうち、25~44歳の年齢層だけで600万人以上を占めています。正規雇用や終身雇用、年功序列といった旧来の日本型の雇用システムはすでに限界を迎えていると言えます。

さらに、2017年に政府が発表した「働き方改革実行計画」で「副業・兼業」が解禁され、サラリーマンであっても複数の勤め先・収入源を持つことを容認する動きがあります。

政府が「副業解禁」に積極的な理由には、「新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備」に効果があると判断したためです。企業側は、優秀な人材の確保、社員のスキルアップが可能と大きな期待を寄せています。雇用される個人にとっても、スキルアップや人脈形成といったメリットだけではなく、副収入を得られることへの関心の高さがうかがえます。副収入を得る、収入源を複数持つ事への関心の高さの理由は、本業で収入増が難しくなっている、という事実があります。

本業で収入増は難しい?

国税庁の「民間給与実態統計調査(平成18年分・平成28年分)」によると、民間企業の平均年収は平成28年が422万円でした。リーマンショックの影響を受けた平成21年の406万円から回復傾向にあるものの、平成18年の435万円からは減少し、平成8年の461万円からは大幅減となっています。この数字からも分かるように、本業での大きな収入増が望めない現状から、副業・兼業に勤しむサラリーマンが増えているのです。

複数の収入源のために

複数の収入源のための副業には「時間切り売り型」と「成功報酬型」の2つに大きく分かれます。「時間切り売り型」とは、1時間あたりで報酬が決まるアルバイトやパートなどの仕事と同じです。

一方、「成功報酬型」とは、自分のスキルを使ったり、ネット上で物を売ったりして稼ぐ仕事で先のネットでの副業は正に「成功報酬型」です。一般的には、サラリーマンの副業としては時間の融通が効く面と本業での経験が活かせることから「成功報酬型」が推奨されています。自分の今もっているスキルが把握できていない人には「成功報酬型」はお勧め出来ません。
その理由を次章でご説明しましょう。

副業は選択肢

政府の推奨する「副業解禁」が将来進むと、働き方の選択肢が増えることで若い世代に「自分探し難民」が増加する事が心配されます。
「副業に何をしたらいいか分からない」という自分のスキルが分析出来ていない人にとっては「副業解禁」は負の側面となります。
「自分探し難民」「副業探し難民」とならないためにも「複数の収入源を持たねばならない」といった強迫観念は避けるべきでしょう。これが「成功報酬型」の副業を始められる人とそうでない人の差になります。

近年問題になっている長時間労働についても、止むを得ず強いられている人が多い事が問題になっています。
しかし、働き方の選べる選択肢のひとつとして長時間労働を捉えるなら、問題は大きくならないのではないでしょうか?
副業か残業かといった選択肢が増えることで不本意な働き方を強いられる労働者が減れば問題は解決します。

20~30代の若い世代が、副業で働き方や生き方を考えるにあたり、業種や世代を跨ぐいろいろなロールモデルに触れることになります。
それにより、本業の仕事だけをやっていては出会うことのない視点や価値観を取り入れるメリットにもなります。

副業を始めるなら・自分を守る

ひとつの会社に囚われない働き方をする時「二枚目の名刺」というキーワードがあります。
「二枚目の名刺」のために本業以外のスキル・フィールドで働こうとするなら、いくつかのルールを自らに課すべきです。
それは、

(1)1日は本業で始まり、副業で終われる勤め先を探す
(2)1日9時間以上のインターバルと週1日の完全休日を確保する
(3)趣味や娯楽の延長か、本業とは顧客層が異なる同業種で探す
(4)本業で副業・兼業先の話題は口にしない
(5)本業と副業の間には時間的な余裕を持つ
(6)収入が低いという本音を口に出すのは禁句

の6つです。このポイントは自らを守るリスクヘッジにもなります。本業で始まり、副業で終わる、1日9時間以上のインターバルと週1日の完全休日、本業と副業の間には時間的な余裕の三つは自分の健康を守るためです。副業を始めたがために、1日当たりの労働時間が増えたり週当たりの休日が減ったりしては労働基準法の観点から見ても問題です。

実は、「副業容認」を謳いながら「個人の労働時間管理」については具体的な指針が示されていません。現状では、副業にあたり自分の健康は自分で守らねばならないのです。

副業を始めるなら・ダブルワークは避けるべき

副業・複数の収入源というと、アルバイトのかけもちやダブルワークなどを考える方も多いかもしれませんが、先述の観点からお勧めしません。時間的な拘束があるものはやはり疲労が貯まります。昼間の本業の後でアルバイトとなると深夜労働が中心になってきますが、こうしたダブルワークは休息がとれません

もうひとつのスキルに気付く

ネットでの副業やNPO活動を「二枚目の名刺」、二つめの収入源とする人が増えています。
NPO活動にしても、本業・本職以外でボランティア活動することに対して、もしも少しでも興味があるのであれば、まずは気構えずに実際にやっている人たちに会いに行ってみたり、週末のイベントに足を運んでみたりするのが良いでしょう。
最初はみんな悩みがちだと思いますが、最初の一歩を踏み出したら一気に面白くなり、自分の知らない自分のスキルや魅力に気付くのではないでしょうか。

多くのネット副業は、労働の対価としてお金をもらうのではなく、サービスや商品を提供して直接的か間接的かは別としてお金をもらうシステムになっています。結果として自分自身が提供したサービスをブランド化することも可能です。こうしたネットでの副業も、新しい自分の価値に気付けるではないでしょうか。

無理にスキルを身に付けない

副業を始めるなら、無理にスキルを身に付けない事です。
「資格を取って起業しよう」とか「スキルアップで収入もアップ」を考えるあまり準備期間ばかり長くなってなかなか副業が始められないのでは本末転倒です。今持っているスキルをどう伸ばすか?人脈は活かせないか?といった手持ちのヒューマンスキルに気付く事から始めましょう。

定年後のスキルアップに備える

副業、複数の収入源と言うと、「お金を稼ぐ」、「本業の収入以外に収入源を持つ」という切り口で語られることが多いと思います。
しかし、ひとつの会社にずっと勤めていると「自分は社外に出たら何ができるだろう?」「身につけたスキルは定年後も通用するのだろうか?」という疑問を持つことがあります。

副業は、単にお金を得るだけでなく、自分の価値観が表現できるような社会貢献(NPO活動)をしたり、社会との新しいつながり方を見出したりすための活動として、本業以外の活動に取り組むことで定年後の人的ネットワークやスキルアップにもつながるのです。

複数の収入源・まとめ

副業・兼業を始めるにあたり、注意点をいくつかご紹介しました。
収入増だけではない、副業のメリットに着目して将来のリスクヘッジとして下さい。

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