「エンプロイアビリティ(employability)」とは、Employ(雇用する)とAbility(能力)を組み合わせた言葉で、直訳すると雇用され得る能力のことです。「雇用され得る能力」とは、企業に雇用されやすい、採用されやすい能力という意味に捉えがちですが、実際はもっと積極的な意味に考えられています。
今回は、「エンプロイアビリティ」に関してその背景や、事例、今後転職を考えている人のためにエンプロイアビリティの高める方法をご紹介したいと思います。転職こそエンプロイアビリティが問われます。
背景
エンプロイアビリティ(employability)が日本の労働状況、転職市場で問われるようになったのは、2000年代に入ってからでした。2001年(平成13年)に、厚生労働省が発表した報告書に初めてエンプロイアビリティという言葉が登場します。
エンプロイアビリティが問われるようになった背景には、産業構造の変化、ITをはじめとする技術革新の進展には目覚ましいものがあります。加えて、各労働者の就業意識の変化、派遣労働など非正規意外の就業形態の多様化に伴って、労働移動が増大しつつあり、転職に対するハードルは下がりました。
労働者に求められるスキルとして企業内で通用する能力から、企業を超えて通用するスキルが問われるようになってきた。また、企業内においてはも、業務遂行能力について、特定の業務への習熟から、変化への適応能力や問題発見・解決能力、さらにはクリエイティブな能力すら重視される傾向にあります。
このように、企業の内外において社員のスキルのあり方に大きな変化が生じ、従来、比較的区分されていた外部労働市場と内部労働市場が相互の関連性を深め、次第に、労働市場としての一体性が生まれつつあったのです。
そこで、一企業にとどまらないスキル、即ち、労働市場価値を含んだ就業能力(エンプロイアビリティ)というものを社内外・雇用される労働者の立場で考える時代になってきたのです。端的に言えば、エンプロイアビリティとは、労働市場価値を含んだ就業能力、つまり、労働市場で評価される能力、能力開発目標の基準となる実践的なスキルと言えます。エンプロイアビリティとは、「会社に都合のいい社員」、「命令をよく聞く社畜」の意味ではないのです。
エンプロイアビリティの概念
先の厚生労働省の報告書によると、エンプロイアビリティの具体的な概念のうち、労働者個人の基本的スキルとしては、
(A) 職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの
(B) 協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性に係るもの
(C) 動機、人柄、性格、信念、価値観等の潜在的な個人的属性に関するもの
と定義されています。上記三つのうち、(A)と(B)は就業中の企業でも評価しやすく「見える部分のスキル」のため、現状の人事評定でも使いやすいスキルであると言えます。
一方、(C)は個人的属性のために「見えない部分のスキル」であり、既存の人事評定では現れにくく、例えば、中高年齢者の中途雇用・転職に当たって、採用基準として使われる場合があります。
これは新規採用においても同様ですが、若年労働者の場合は就業後の人格形成やOJTによっても価値観等は変わるので、画一的、汎用的な評価・採用基準に盛り込むことは難しいとされています。
この三つのエンプロイアビリティの概念は、転職市場においてキャリアコンサルティング等により、「見える部分のスキル」と「見えない部分のスキル」を統合的に評価・顕在化する事で、雇用される側のエンプロイアビリティを自らが把握することは可能と考えられています。
エンプロイアビリティは、これからの転職市場を生き抜くための必要な自己評価の指標となります。
転職市場でのエンプロイアビリティ・事例
エンプロイアビリティを直訳すると「雇用され得る能力」と先述しました。
転職市場での表現にするなら、「労働者が就職・転職に困らない(良い条件で採用される)よう、労働市場で高い評価を得られる能力」という事になります。つまり、エンプロイアビリティを磨いておけば、より好きな会社により高い条件で転職が可能という事になります。
例えば、営業職を希望する人なら、「商品/サービスを売るスキル」は当然必要ですが、それだけではエンプロイアビリティが高い営業職とは言えません。
・営業職として望ましい行動特性・高業績者の思考(コンピテンシーと言います)を身に付けているか?
・企業の中で、上司やメンバーと協調して気持ちよく働くためのコミュニケーション能力があるか?
・企画力や改善提案など、企業の競争力をより高めるための付加価値が発揮できるか?
・チームの一員として、メンバーと協力してひとつの目標に一丸となって取り組むチームワーク力があるか?
・チームを率いるリーダーシップがあるか?
・ビジネスパーソンとして、どの企業でも通用するコンプライアンスや教養・常識・マナーを身に付けているか?
などが、具体的なエンプロイアビリティの要素といえるでしょう。
上記の例は営業職に限らず、一般的なケースでも問われます。
これら、「見える部分のスキル」と「見えない部分のスキル」を統合的に自己評価し、転職で自らのエンプロイアビリティをアピール出来るか?がこれからの転職市場では問われるのです。
エンプロイアビリティをアピールするには?
「見えない部分のスキル」を含むエンプロイアビリティを上手くアピールするにはちょっとした工夫が必要です。エンプロイアビリティを高めるためには、どこで何年働いたかではなく、「そこで、どのような知識を蓄え、どのような成果を上げる事ができた」かが重要です。
専門的なスキル、コミュニケーション能力、企画提案能力、問題解決能力など、座学だけでは身に付けられないスキルを実際の仕事を通して、エンプロイアビリティとして習得していくことが大切です。
日常の業務の中で、今鍛えられる専門性・能力を明確にし、それを職務に落とし込み、コミュニケーション能力を磨くことで、プレゼンテーションスキル、傾聴スキルを身につけ、仕事を円滑に進めていくために対人関係のスキルに関しても高めていく事が求められます。
転職を考える人が今の仕事の中でキャリア形成を行いながらエンプロイアビリティを高めるには、
1.自らが何をするかの動機づけを発見し、その動機づけの基軸と合った職業像を見つける。
(モチベーションと目標設定)
2.職業像に見合った、あるいは、達するために必要な仕事を見つけ、そのために必要な能力と、思考特性、行動特性及びスキルとの違いを確認し、必要な行動特性やスキルを習得する。
(目標にかなった手段・方法)
3.自らの考える職業像をベースに仕事の幅の拡大や仕掛けを行っていく。
(スキルの拡大・ニーズに適うスキルの模索)
の3つが具体的なポイントになります。
目標設定を明確にしなければ、モチベーションも高まりません。「何を目標として」、「どんなスキルを修得したいか」といった具体的なゴールを日々意識しながら業務に向かいましょう。最適な目標にかなった手段・方法を選択したいと、時間の浪費になりひいてはモチベーションも下がります。
「PDCAサイクル」を実践しながら、業務の成果を自ら検証する習慣がエンプロイアビリティの「見えない部分のスキル」である動機と信念を強化します。転職市場でどんなスキルが求められているか、将来どんなポジションを目指すのか、といったスキルの拡大・ニーズに適うスキルの模索や市場調査の習慣も大切です。
目的意識のはっきりした将来設計で転職に臨むべきなのです。
転職におけるエンプロイアビリティ
履歴書・職務経歴書に羅列するだけでは、あなたのエンプロイアビリティは人事担当者に伝わりません。
何を(What)、どれくらいの期間(When)、どのように(How)、どれくらいの成果(How Much)が明確になるエンプロイアビリティをアピールしましょう。
パラレル
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