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リモートワークのこれから

日本でインターネットが普及し始めたのは、1990年代に入ってからでした。
以降、日本の企業におけるインターネット利用は2007年(平成19年)には99%に達し、2013年(平成25年)末では99.9%とほぼ全企業で導入され、その8割は光回線と高速インターネット環境も多くの企業で普及しています。
同時に、社外からのパソコン・携帯電話等の接続環境も過半数の企業で導入されており、クラウドコンピューティングの導入も33.1%と、多くの企業においてインターネットと業務は切り離せないものとなっています。

ネット環境の拡充に伴い、企業における従業員の働き方、企業の立地にも変化が現れました。
例えば、ワープロソフト「一太郎」で成長を遂げたジャストシステムは本社を首都圏ではなく、徳島県に置いています。
これは、必ずしも本社機能や開発拠点を製品の消費地である実行密集地域に置く必要のない産業の特徴とも言えます。

リモートワークに対する意識

「一太郎」のジャストシステムの例は、先進的と言えます。
国土交通省の調査によると、「在宅型テレワーカー」の人数は2011年から増加傾向にあり、2013年の推計では720万人に達しているそうです。また同じ調査において、週1日以上終日在宅で就業する「雇用型在宅型テレワーカー」の数についても2013年時点で260万人と推計されています。

この統計に使われている、「在宅型テレワーカー」とは、普段収入を伴う仕事を行っている人の中で、仕事でITを利用している人かつ、自分の所属する部署のある場所以外で、ITを利用できる環境において仕事を行う時間が1週間あたり8時間以上である人であり、自宅(自宅兼事務所を除く)でITを利用できる環境において仕事を少しでも行っている人を指します。

「テレワーカー」で使われている「テレワーク」という言葉は、「リモートワーク」の古い表現ですが、内容は同じものを指します。さらに、アンケート調査でリモートワークに対する働き方へのニーズを聞いてみたところ、男女問わず過半数が「既に利用している」、「積極的に利用したい」、「必要のあるときに利用したい」と回答し、リモートワークは既に一定の支持を得ている事が分かります。

テレワークとリモートワークと在宅勤務

「テレワーク」と「リモートワーク」は表現の新旧に違いがあるだけで、内容は同じですが、「在宅勤務」とはどう違うのでしょうか?
結論から言えば、「在宅勤務」とは、リモートワーク・テレワーク・在宅ワーク全ての総称なのです。
「リモートワーク」も「テレワーク」も「在宅ワーク」も、言い方が異なるだけで、意味合いとしては「場所に縛られず働く場所を自由に選択できる」働き方ということに尽きます。
ただし、ニュアンスが若干異なり、「リモートワーク」はエンジニアやクリエイティブなど技術・スキルを活かした働き方、「在宅ワーク」はちょっとした空き時間に家で稼げるアルバイト的なニュアンスで使われています。

その意味で、「リモートワーク」は今後IT系の仕事において増々普及していくでしょう。
一方で、「リモートワーク」には不向きな産業もあります。農業・水産業などの第一次産業はもちろん現地でないと仕事になりません。製造業も生産工程は社員が生産ラインに居ないと成り立ちません。
つまり、リモートワークは共同作業でないと仕事を進めにくい産業・職業では、導入は難しいのです。

例えば、現場での共同作業が必要なイベント運営業や、建設業など現場に出向くことが必須の仕事においては、リモートワーク導入に限界があります。また、産業に関わらず、企業のライフステージにおいて、リモートワークが最適解でない事は実例が示しています。

フリマアプリで有名な「メルカリ」ではリモートワークを禁止しています。その理由は、「社員みんなが同じ方向を向くことで、高い生産性を維持して働くことが出来る」としています。さらに、「単純に効率のことだけを考えれば、リモートワークを認め、グループウェアやTV通話などを活用すれば済む話です。でも、あえて顔を付き合わせながら親交を深めていこうとするのは、それ以上にコミュニケーションを大切にしているからです」というのです。

リモートワークを禁止している「メルカリ」は、2013年設立の若い企業です。その若さゆえに社員同士のコミュニケーションを親密でホットなものにするために、リモートワークを禁止しているのでしょう。企業として成熟し、社内コミュニケーションが円滑になれば、リモートワーク禁止もそう遠くない未来に解禁されるかも知れません。

リモートワーク事例

積極的にリモートワークを推進している企業もあります。
日本では、2020年までにリモートワークの導入企業を2012年度の3倍に増やす目標を立てています。
その先進事例として、日産自動車では、2014年に全社員を対象に在宅勤務が出来る制度を導入しています。運用方法も確立されていて、リモートワーク制度利用者は、e-ラーニングを事前に受講する、前日までに在宅時の業務計画を提出し、上司の承認を得る、業務計画の内容を職場内で共有するといったルールもあります。

さらに、「在宅勤務時の上限は月5日、1日8時間を限度とする」「上限月40時間以内であれば5日以上の部分在宅の利用も可能」といった具体的な数字を定め「育児・介護事由の上限は所定内労働時間の50%」のような弾力的な運用もしています。
これも、日産自動車が成熟した歴史ある企業だから可能なのでしょう。

東急リバブル株式会社でも、効率性・生産性向上とワ-クライフバランス実現のため、リモートワーク(在宅勤務)制度の運用を開始しました。東急リバブルはこれまでにも、生産性向上を目指した時間にとらわれない働き方として時差出勤制度を導入するなど、「働き方改革」を推進していました。リモートワ-クについては、2015年から各部門にて実施したトライアルで、対象者の70%が「業務効率が上がった」との回答があったそうです。

東急リバブルでは、週に1~2回、月6回を上限として、リモートワークに適した業務を切り出し、自宅で集中して行うことで業務効率の向上を図り、段階的に導入し、2017年度は事務部門の全スタッフ、2018年度以降は営業職も含めた全社員が利用可能な制度として、「時間と場所にとらわれない多様で柔軟な働き方」の選択肢の一つとすることを目指しています。

情報漏えい対策としては、データを外部のサーバーで集中管理して社員の使用する端末に残さないクラウドの仕組みを使ったパソコンを新たに導入するなど、情報保全にも抜かりがありません。

リモートワークのメリット

東急リバブルの例にもあるように、リモートワークには情報保全など課題もあります。
しかし、リモートワークのメリットには、

・社員の自己マネージメントが向上した
・妊娠・育児・介護などの理由、身体障害、あるいはケガなどにより、恒常的または一時的に通勤が困難な人でも働く事が出来る
・リモートワーク対象者分のオフィススペース削減により、賃料(コスト)を減らすことが出来る
・社員の通勤にかかる負担を軽減出来る
・優秀な人材を採用しやすい

これは、オフィス固定勤務の場合、オフィスに通勤可能な距離に住む人しか雇うことができません。しかし、リモートワークを導入することで通勤の制限がなくなり、海外に住んでいる優秀な人材でも働く事が可能なのです。

これからのリモートワーク

エンジニア、クリエイティブ職に限らず、総務・企画部門でもリモートワークは普及するでしょう。
集約労働型の雇用形態は、ある種の産業に集約され、例えば生産拠点を海外に移動するなど、大きなパラダイムシフトが起こる可能性もあります。リモートワークが普及するためには、社員一人一人のマネージメント能力向上、成果報酬型人事評価の導入、脱時間給制度など乗り越えるべき課題はありますが、大きな潮流として動きは止まりません。

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