政府の働き方改革の推進により、複業や副業というものへの関心が高まっています。
そもそも安倍政権が副業解禁を打ち出したのは2016年で、やっと今になって、という感じも強くはあるのですがそれでも今年への期待が高い人は多いようです。
では、2018年は多くの方の期待通り副業解禁と複業の元年とすることができるのか。
その展望に迫ってみます。
政府の方針は固い。
それではまずは政府の動きを見てみましょう。
安倍総理の好きそうな改革ではある。
安倍総理の働き方改革への熱意は、かなりのものだと考えられます。
特に安倍総理は、どちらかというと地道に実務をこなすタイプというよりは、大ナタを振るって歴史に名を残すことが大好きな傾向にありますからその期待はずっと高水準を維持していました。
というのも、働き方改革は、これまでの日本の旧弊を一掃し新しい価値基準を創出するような改革です。
それはいうなれば、日本の戦後つちかってきて労働体系の一大転換と言ってもよいほどに大きな改革になることは間違いありません。
しかも安倍総理にとって、その支持率の大きな基盤は経済です。
株価・失業率・物価。特に安倍政権はこの三つを常に大きく取り扱い、その経済政策の中心に据えていましたから、雇用状況の改善は指示率や今後の各種選挙にとっても重要な課題。
オリンピックまで総理でいたい安倍総理にとって、自民党総裁選に向けてぜひともやっておきたいことだと言えるのです。
決意の表れは念頭にあった。
そんな中、決意の表れは念頭から感じられるものでした。
今年一年の抱負を国民に向けて語る年頭記者会見では、防衛・少子高齢化・デフレ脱却とその年頭の決意を述べた第4番目の項目として働き方改革について述べています。
しかもそれを歴史的な大改革と位置づけ、2018年通常国会を働き方改革国会と名付ける熱の入れよう。
そこから考えても、また、念頭からそのような発言をしてしまったという事実から考えても、今年何らかの大きな動きに出ることは容易に想像できます。
もちろん、政府が動いたからと言って財界が動くとは限りません。
しかしながら、これまで経済界と強度歩調をとるべきは鳥反駁するときは正面から反駁してきた安倍政権ですから、ある意味若干のごり押しで話を先に進める可能性はあります。
副業や複業に反感を持つ人には苦々しく、賛成の人に合はありがたい一年になりうそうな気配は、今の段階でもひしひしと感じるのです。
政府の決意は固い
こうなってくると、もはや政府が今年を複業元年ととらえていることは間違いないでしょう。
もちろん、政府自体が働き方改革が=副業関連ではありません。しかし、2017年末の11月に働き方改革の有識者会議に対して厚生労働省が出したガイドラインでは、しっかり複業について触れています。
そこには「労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に労働者の自由」と明記されているのです。
当然それは厚生労働省が発表したものですから、政府の方針であると言ってもよく、そのことから政府が働き方改革の中の項目に副業解禁を入れていることは明確です。
また、在宅勤務である、いわゆるリモートワークともいわれるテレワークについてもガイドライン案を示しています。
そこでは一般に副業や複業において懸念される、長時間労働や労災認定の諸問題に関するガイドライン案も同時に示されており、その本気度はかなり高いと言わざるをえません。
今年を複業元年とした政府の決意は、かなり硬い物であるとみていいでしょう。
そこに壁はあるのか。
ではそんな政府の硬い意志を阻み、今年を複業元年とさせない壁について考えてみましょう。
労働者サイドにとっては御の字である。
大手人材系企業エン・ジャパンの2015年5月のアンケートによれば、労働者自体は副業に賛成と出ています。
しかも、その割合は88%の回答者が副業に興味があるとしていて、労働者自体は今年が複業元年になることは望ましい事であるのは間違いないと考えられます。
もちろんそれは「副業」であって「複業」ではないのですが、それはほぼこの場合は同意と考えていいはずです。
というのも、やはり複業というのは数多くの人が気軽に、そして当たり前に副業をするようになって初めて、その延長線上にあるものであるからです。
ですから、副業というものにこれくらいの割合の人が興味を抱いているのであれば、それは複業元年への望みは高いと考えていいはずなのです。
野党に力なく、そこに障害はない
では、政治的なパワーバランスから考えてみてみるとどうでしょう。
確かに政治は水物ですから、全方位において盤石に見える安倍政権が倒閣されるようなことになれば一気に働き方改革への道は閉ざされてしまうでしょう。
特に今倒閣されれば、それはほぼ間違いありません。
何せ、昨今の野党は、その存在意義を反安部であることに固執していますから、安倍総理の推進する政策を続けるとは考えにくいのです。
しかし、やはりかなりのことが起こらない限り、今の野党に安倍政権を倒す力はありません。
2017年の総選挙において、安倍政権の盤石ぶりは健在でしたし、唯一倒閣の可能性のあった民進党は新進気鋭の希望の党ともに心中した形になってしまいました。
新しく出来た立憲民主党も、野党第1党としては歴史的に議席数の少ない小政党。
少なくとも、政治的に安倍総理が推進力を失い、そして働き方改革が野党の手によってとん挫させられるということは少し考えにくいかもしれません。
一番の障壁は経団連
では財界の方はどうでしょう。
ここにはやや大きいと思われる障壁があります、そう『経団連』です。
経団連は、副業の解禁について、これまで何度も書いてきたように「機密漏洩」と「本業への影響」を盾に、その推進に難色を示しています。
これは2017年12月に経団連の榊原会長が、明確にコメント絵をしていることからも明らかです。
もちろん経団連を構成する経営者たちは、古き良き高度経済成長の日本を生きた人ですから「一意専心」の労働者意識を変革させることに難色を示すのはある意味想定内です。
本来であれば、時間がたてばこういう古い考え方が駆逐されるのですが、それでは今年が複業元年ではなくなります。
しかも、安倍政権がこれから何年もずっと政権を担うということまでなると、それはいくらなんでも無理ですし、経団連の重い腰が上がったときには政権が変わっていたというのではどうなるかわかりません。
しかも、経済界の上部であるこの組織の壁は思いのほか厚く、政府でもそうそう簡単に敗れるものではありません。
ある意味これをどう突破するかによって、安倍政権の真価が問われるのかもしれませんね。
社会のニーズの高まりがどこまで力を発揮するのか
とはいえ、ここに実は社会のニーズというものが反映されると様相は一変します。
経団連の会長がいかに古き良き一意専心の労働者意識を求めていようと、それは終身雇用があった時代だからこそ許されていたもので、今の社会にはそぐわないのは言うまでもありません。
AIの高度な発展で、社会の不安定化は、経済の堅調とは関係なく進んでいきますし、労働者を取り巻く環境は一層厳しくなることが予測されます。
そうなったとき、政府の方針と社会のニーズはきっと合致するでしょう。
もちろんポジティブな未来に向かっての合致ではありませんが、少なくとも、そうしないと生きていけない労働者が出てくることが予想されている以上、そこに疑いの余地はないように思えます。
この社会のニーズの高まりと政府の方針の合致による波が、経団連の思う日本の形をどう突き崩して行けるのか、そこにスピード感は存在するのか。
2018年が副業原燃となるかどうかは、そこにかかっているのかもしれません。
振り帰ればそうだったな、が理想。
ここまで2018年が複業元年になりうるかを見てきましたが、実は、そうなって欲しくないというのが実感です。
というと、誤解を招いてしまいそうなので、正確に言うと、2018年を生きる私たちが2018年は複業元年だとしっかり意識できるような状態は好ましくない、と言う事です。
なぜなら、社会の変化は緩やかであるに越したことはないからです。
つまり、複業元年だとしっかり意識できるほどの変革のスピードを持って副業解禁の流れが来てしまうということは、そうしなければならないほどの出来事が起こるということ。
たとえばそれが、大きな凶事であった場合は、笑い事では済まされません。
また、よい事であったとしても、一気に変わる社会には必ずロスがつきものですし、複業のある社会を望む私でも、社会の受け皿、法律を含めたインフラはいまだ整っているとはいいがたいのが現状です。
ですので理想は、数年後に複業が当然となったとき、振り返ってみれば2018年が複業元年だったなという状況です。
そしてそのためには、まずゆっくりとでも構わないので、労働者の意識が変わっていくことが不可欠なのです。
問題は多くとも、日本は民主主義国家です。
いくら政府が主導してスピード感ある働き方改革をしても国民が付いていくことができなければ失敗に終わりますし、逆に、経団連がいかに嫌がっても国民が求めれば社会は変わります。
いつか振り返ったとき、2018年は複業元年だったというために。
私たち国民が複業というものに対してしっかりと考え、まず国民からその旧態依然としたマインドから脱却していくことが何より重要なのだと、言えるのです。
パラレル
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