人口減少、少子高齢化、社会保障費の増大など、社会全体が大きく変わるニュースが多い昨今、「働き方」についても大きな変化が余儀なくされています。
そんな中、漠然と今の働き方に不安を覚えている方もいるでしょう。
しかし、今後の働き方をある程度予想できていれば、備えることもできるはず。
そこで今回は、雇用形式の代表例である「正社員」と、その対極にある「フリーランス」の2つの例を元に、なるべく事実を元に、今後の働き方を予想していきます。
これからの歩む道を決める参考にしてください。
これからの働き方【正社員編】
日本における正社員とは、会社が定めた就業規則に準じ、期間が定められていない労働契約を結んだ者を指します。
法的な定義はありませんが、一般的に、
・簡単にクビにならない
・安定した給料をもらい、仕事を継続できる
・保険や福利厚生等の保証を受けれる
とされています。
しかし、現在、この制度およびメリットは破綻しかけています。
理由としては、とりわけ企業側の事情に寄るところが大きいでしょう。今後は企業にとって、市場環境に合わせて臨機応変に人材リソースの数を調整しにくい正社員を雇うことは、純粋にリスクになるからです。
日本の人口は約1.3億人と非常に多く、これまでの日本企業は国内の内需を満たしていれば利益を確保することができていました。
人口も緩やかに上下する程度で、内需が安定していたため、製品やサービスを生産するための人材リソースも安定して雇用できていたわけです。
しかし、人口が急激に減少し始めることで、この雇用は崩壊します。
人口が少なくなった内需では、社員の雇用を守り続ける会社の利益が十分確保できないようになるばかりか、その内需をも、グローバル化によって巨大資本の外資と取り合わなければいけなくなりました。
日本企業の雇用慣行とは無縁の外資は、業績が悪ければ正社員をクビにする・上向けば増やすなど、利益に対して臨機応変に人材リソースを調整することができます。
日本企業はそうはいかないため、業績が悪くても人材をクビにすることができず、コストが増加。
1. コストを回収するためサービスや製品の値段を上げると競争力が低下
2. 人材が流動せず、優秀な人材を新たに雇用できない
3. 競争力を増すための付加価値をもっとつけにくくなる
4. さらに利益を圧迫する
という負のスパイラルに陥りやすいのです。つまり、企業にとっては、正社員の雇用はリスクになっていきます。
しかし、正社員がいなくなるのか、というとすぐにはそうはなりません。では、今後、正社員はどうなっていくのか、どのようなメリット・デメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
できる社員の給料が上がり、できない社員はもっと下がる
あなたの会社では、ITが進み、「社員の生産性の見える化」が行われていませんか?
今行われていなくても、今後はますます、時間あたりの生産性が管理されていくはずです。
生産性の高い仕事を増やし、生産性が低い仕事はなくしていこうとする動きが加速されていきます。無駄なミーティングも減ることに。
良いことだらけに思えますが、これはひとえに、「できる社員・できない社員の見える化」が行われ、できる社員は給料が上がりやすく、できない社員は給料を下げられるようになることを示唆しています。
日本の労働基準法第91条では、給料の減額について次のように定められています。
「就業規則に労働者の給料を制裁により減額する旨を定める場合は、減額は1回の額が平均賃金の1日の半分を超え、総額が1賃金支払い期における賃金の1/10を超えてはならない。」
つまり、給与改定では10%まで給料を下げられるものの、多くの企業ではこのような「減額」はされてきませんでした。
なぜなら、「制裁」の理由を明確に証明しにくいからです。
「君は仕事があまりできないから、給料を下げるよ」
と言っても、
「仕事ができないって、どうやって証明するんですか?見えないところで、僕は役に立ってるはずですよ」
となり、社員から訴えられたら会社が負けることが多かったのです。特に大企業では労働組合が強いですから、1%下げることさえ難しいでしょう。
しかし、生産性の管理と正確性が増せば、どうなるでしょうか。
「◯◯さんの生産性は皆の平均値よりも低いから、給料を▲%下げます。」
ということが平気で行われるようになりますし、法律の解釈も変わるはずです。
具体的に言えば、「制裁」の要件がゆるくなるはずです。でないと、人材リソースが重荷になり、日本企業は外資と競争で負けやすくなりますし、法律の解釈への批判が増すはずだから。
しかし、これは悪いことだけではありません。生産性が見える化するということは、できる社員もわかるようになるということ。
できる社員はもっとやる気になってほしいわけですから、会社側は給料を上げようとします。できない社員から減らした分を上乗せするだけですから、企業にとってコストは変わりません。
もちろん、給料を上げても、「生産性の見える化」によって他の社員にも示しがつきやすいです。このように、正社員間の格差はますます開くことになるでしょう。
正社員が特権化していく
前述のように、できる社員は優遇され、できない社員は冷遇されていくことが定常化すると、どうなるのでしょうか。
まず、企業側・労働者側とも、以下のようなインセンティブを持つようになります。
・ 生産性の高い仕事をこなそうとする
・ 生産性の低い仕事を改善しようとする
・ 上記を行い、労働者は何としても正社員に残ろうとする
・ 非正規雇用者は正社員登用を目指す
・ 会社側はできる非正規雇用者を正社員化する
欧米の生産性が高いコンサルティングファームのように、アップ オア アウトとまではいかないまでも、できる社員は残り、できない社員は転職する動機が高まるため、人材の流動化が増します。
残っている社員(できる社員)は、より特権的な待遇を手に入れることになるでしょう。欧米の企業では部長や課長クラスでも、日本の取締役以上の年収をもらっていることもあるのは、このためです。
このようなピラミッドで、上に行けば行くほど特権(給料やその他オプション)が増す構造を維持することは理にかなっています。
しかし、正社員自体の数は非常に少なくなるものの、なくなりはしません。他の社員が目指す雇用形態にしておく必要があるからです。同じく正社員の新卒社員も、なくなりはしませんが、下記の理由により、縮小していく傾向にあります。
新卒の採用方法が変わる
新卒採用は今後、下記のような採用方法になっていくと考えられます。
・ 採用の絶対数を減らす
・ 通年採用
・ できる学生は個別に採用する
・ 海外採用を増やし、国内採用を減らす
・ 採用時から雇用条件に差をつける
・ 3年、5年などはクビにならない保証を設ける
新卒採用のメリットは色々と言われますが、雇用の流動化が増すほど、メリットは少なくなります。
例えば、社員の平均年齢や人数バランスをとるための採用や、安定的な労働力の確保というメリットがなくなるのは想像しやすいかもしれません。
今までと異なり、雇用の流動化によって中途採用のコストが下がり、採用人数も多くなれば、会社の業績によって臨機応変に人材リソースの数を調整することが容易になるからです。
また、新卒など若い社員ほど、働き方について柔軟な考えを持っています。
新卒は、複業や副業、フリーランスとなって独立するなど、会社に縛られずに自分らしい働き方を目指す心理的ハードルが低いのが特徴です。
そうなると企業は、2~3年で辞める可能性の高い新卒の採用コストや育成コストをかけることと、中途採用のコストを天秤にかけ、コストパフォーマンスが優れている採用方法を選択することになります。
新卒の採用コストは一定であるにも関わらず、中途採用のコストは雇用・人材の流動化によって今後ますます低下していくため、新卒採用が先述のようになっていくことは容易に想像できます。
以上のことから、新卒採用はコストパフォーマンスが低くなることが予想されます。
よって、ポテンシャルを考慮して採用した新卒社員でも、5年ほどの雇用を「損益分岐点」としてとらえ、それまでに芽が出なかったら、それ以降の雇用の保証はしない、と最初のオファーレターや契約段階で定められるようになるでしょう。
「総合職」という区分がなくなっていく
総合職とは会社側にとって都合が良い制度で、服務規程の範囲内で職務命令を出せば、原則、社員は拒むことができません。出張命令などが良い例です。
人事の方は、下記のような経歴書を見たこともあるはず。
・入社2年目までは営業
・3年目はマーケティング
・4年目は人事部
・今は社長室
正直、専門スキルが何なのかわからない人の典型的な経歴ですが、総合職だとこのような経歴になりやすいのも事実。
会社としては、リソースが足りない部署に、リソースをスライドさせて対応させるのに総合職は都合が良いわけです。
しかし、今後は海外企業を含めた企業間の競争がより激しくなり、付加価値が低い企業は淘汰されていきます。
付加価値をつけられるかどうかは、その企業の専門性と比例し、企業の専門性は人材のスキルに比例します。
よって、専門スキルを持たない社員の雇用機会は減少し、専門スキルを獲得しにくい雇用形態である「総合職」で雇用される魅力は社員にとってなくなっていきますし、企業にとっても維持する動機はなくなっていきます。
プロジェクトドリブンな働き方になる
未来を予測しにくく、今後ますます早く変化する市場環境に対応するため、プロジェクト単位での働き方(プロジェクトドリブン)になっていきます。
プロジェクトドリブンというのは、プロジェクトが立ち上がったら、そのプロジェクトに必要なスキルを持つメンバーをその都度集め、1つの部署のような機能を持たせる働き方です。
プロジェクトが成果を生まなければ解散になり、それぞれ別のプロジェクトのリーダーに採用されるか、人材プールで他のプロジェクトから声がかけられるのを待つか、スキルがなくとも入れるプロジェクトにアサインされます。
Googleなどの有名な外資系企業の場合は、プロジェクトが解散され、2度ほど他のプロジェクトから声がかけられなければ、退職勧告がなされます。
このように、特にBtoCの案件を扱う企業としては、消費者の嗜好は変わりやすいため、2~3年毎にプロジェクトが立ち上がるor解散されるようになることも珍しくなくなるはず。
ただ、この働き方は市場環境に即応しやすく、今後の働き方として合理的である反面、プロジェクトに必要なスキルを持った社員が社内にいない場合、プロジェクトが成立しづらいという側面もあります。
例えば、
「今後回線は5Gになる。よって、1年後を見越して5Gに合った新しい広告を作りたいが、インフラに詳しいエンジニアが社内にいない」
など。
このような場合、人事が中途社員を採用しようとしても、都合よく要件を満たした人材は見つかりにくいですし、たとえ見つかったとしても、その人材も今いる会社を辞め、有給を消化し、入社するのは3ヶ月先、ということも。
それでは競合他社に先んじられるのは目に見えていますし、市場環境に即応できるというプロジェクトドリブンのメリットを活かせません。
よって、このような場合に多く用いられる採用方法が「フリーランスの活用」です。
つまり、「フリーランス+正社員」のチームでプロジェクト単位で動き、プロジェクトが終わったら解散、管理していた社員はプロジェクトの結果をみて進退が決まり、フリーランスは再度異なるプロジェクトにアサインされるか、契約更改を行う。
そんな働き方が一般化することになります。
では、そこで採用されるフリーランスは、今後どのような働き方になるのか、見ていきましょう。
これからの働き方【フリーランス編】
今まで、企業にとってフリーランスというのは「外注先の一つ」でしかありませんでした。
しかし、今後は、前述のように、正社員とフリーランスが社内・リモート問わず1つのチームとして動くことが一般化していきます。
それに伴い、フリーランスに求められることや、働き方はどう変わっていくのでしょうか。
スキルの要求が高くなる
働き方や考え方の変化と、正社員の減少によって、フリーランスの人口は確実に今後増えていきます。
しかし、フリーランスが増えることで、フリーランス間での価格競争が発生し、スキルがそれほど必要のない分野の仕事では委託単価の低下が顕著になりますし、実際その流れは近年加速しています。
そのため、フリーランスとして収入を安定的に得るためには、より単価が高い仕事(専門スキルが求められる仕事)を請け負う必要に迫られますし、学習が求められるようになるでしょう。
分業化しやすい仕事のフリーランスが増える
求められるスキルが専門化されるということは、分業化・分担化されていく、ことを指します。
そうなると、スキルの要求値が低い仕事は、より安い代替労働力で賄われます。
よって、中途半端なスキルを持っているフリーランスよりも、「つぶしが利かないが、高い専門スキルを持つフリーランス」の方が仕事を受注しやすくなりますし、企業としても仕事を任せやすくなります。
例えば、サーバーサイドもそこそこできるフロントサイドエンジニアよりも、サーバーサイドしかできなくてもサーバーサイドのことなら、とてもよくわかっているサーバーサイドエンジニアの方が採用されやすい、というイメージです。
プログラミングスキルがあれば食えるわけじゃなくなる
2014年前後に、新興のプログラミングスクールが多く立ち上がりました。
そこでは、「プログラマーじゃないと、これからは食べていけない」ということが喧伝されてきましたが、本質は「プログラマーorエンジニア」という職の問題ではなく、自分のキャリアやスキルに「強み」があるかどうかです。
逆に、プログラマーというのは、実は代替が利きやすい職業でもあるのです。
例えば、非常に優秀なイラストレーターがいたとします。
しかし、どんなに優秀なイラストレーターでも、1日の作業量には限界がありますので、イラストを多く生産するためには、イラストレーターを増やすしか方法がありません。
イラストレーターは労働集約的な職業の代表例です。
対して、プログラマーの場合は1人の優秀なプログラマーは、100人の普通のプログラマー以上の生産性があることもザラです。
そうでなくても、優秀なプログラマーが上流を設計し、基幹部分を作り、普通のスキルを持つプログラマーにブランチを担当させるようなことは今よりもさらに進みます。
中途半端なプログラミングスキルは、強みではなくなるのです。
フリーランス同士「ハウス化」していく
プロジェクトチームの責任者は正社員が努め、専門スキルを持つメンバーはフリーランスを頼るという働き方が一般化していきますが、フリーランスがチームで求められることはノウハウやナレッジをアウトプットし、チームに貢献することです。
対して、スキルをインプットし、磨いていくにはどうすれば良いのでしょうか。
そのヒントは、ハウスに属すことにあります。
スキルが1番成長するのは、同じような職種・業界の人間と切磋琢磨し、情報を共有し、仕事の人脈を利用し合い、勉強会を行うなど、コミュニティに属することにあります。
例えば、アートハウスやソフトハウスなど、アートやソフト開発を専門に受注するハウス(開発会社)は多くありますが、これがフリーランス同士という「個人単位」で行われるようになると予想されます。
フリーランスは自身のスキルを仕事をやりながら高めつつ、人脈や交渉によって仕事を得ることが重要になるため、このような個人間での情報・ノウハウの共有に対する需要が強いです。
今は、有名なプログラマーやデザイナーが主催するオンラインサロンや特定のコミュニティに限られていますが、今後はより一般化していくはずです。
人脈や交渉がより重要になる
フリーランスが多くなり、かつ企業側もフリーランスの採用コストが低下し、雇いやすくなったら、フリーランス同士の値下げ競争が起きます。
そして、企業による優秀なフリーランスの囲い込みや、独占契約が当たり前に行われるようになるでしょう。
優秀なフリーランスはハウス化してコミュニティに属すことになると先述しましたが、企業は採用コストをより下げるため、そのコミュニティでの採用をフリーランスを通して行うようになります。
具体的に言えば、
「優秀なフリーランスの人脈を辿れば、同じく優秀なフリーランスを採用できる確率が高く、かつ採用コストをもっと抑えられる」
ということ。
つまり、単価が高い仕事は、優秀な人材間でのクローズドの案件になっていき、紹介や、人脈をたどることが最適な受注方法になっていくわけです。優秀なフリーランス同士でハウス化・コミュニティを築いた方が、互いに共有するインプットの質が高く、メリットも大きいからです。
よって、ますます人脈や、価格交渉が重要になります。しかし、人脈は一朝一夕では築けません。
加えて、コミュニティ内で既得権益を得ている既存のフリーランスからは、新しく参加することを嫌がられることもあるでしょう。だからといって、少しでも有利な契約を結ぶために、自分で何社とも直接交渉を行うのはコミュニケーションコストも増加し、非効率です。
よって、今後はフリーランスをまとめるフリーランスや、フリーランスを束ね、フリーランスに有利になるよう契約を主導する専門のエージェントや法人が多くなるでしょう。
フリーランスにとっても、そのようなエージェントを利用したほうが、条件の良い仕事を受注できるようになりますし、交渉にあてていた膨大な時間を自らのスキルを向上させることに充てられるため、合理的だからです。
まとめ
日本が置かれている状況と、覆せない統計的な事実を元に、これからの働き方を予想しました。
遅かれ早かれ、ここに書いたことは現実化していくと思われますが、自分自身に「強み」があれば、いつの時代も活躍することが可能です。
もちろん、自分自身で自らの強みを自覚していればいいですが、気づいていないだけということもあるはず。そういう場合は、今まで気づかなかったゆえに、自分で考えてもすぐには答えが出にくいものです。
自分の新たな可能性を見つけるためにも、エージェントなどに気軽に相談してみてください。
パラレルワーカー
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