働き方改革

「働き方改革事例まとめ②」雇用自由化がもたらす実力主義

働き方改革後の企業の対応について、前回はダイバーシティーを中心にまとめてみました。
今回は、雇用形態や採用方式、社内登用制度を中心に、新しい取り組みを始めている企業を中心にまとめていこうと思います。

進む雇用形態の自由化

では、各企業が雇用形態や社内登用制度をどう改革しているかを見てみましょう。

イケア・ジャパン株式会社「全社員の正社員化」

雇用形態のボーダーをなくす。

これまで非正規社員やパート従業員など、様々な雇用形態が生まれてきた中で、その格差を取り除こうとする取り組みとしては、このイケアのプロジェクトがその先頭に立っているといえます。

その名も、全社員の正社員化
まずは、パート従業員は「短時間勤務正社員」となり、有期雇用の契約社員を「無期雇用」としたのです。これにより、仕事量が同一でも雇用形態という立場によって格差のついていた賃金が是正され、また同時にパートや契約社員だからといって責任の重さが変わらなくなりました。しかも、賃金は時給換算、まったくのフラットです。

さらに、いわゆる元パートであった短時間勤務正社員にチャレンジ制度を設けて、自らキャリアアップをしてフルタイムの正社員に挑戦する制度まで設けたのです。まさに、自由な雇用形態が、競争を激しくする。そして、その競争の激化が、正社員だからといった気のゆるみをなくし、会社の利益にできる。そういったシナジーが生まれる制度だといえます。

コストコホールセール・ジャパン株式会社「給与の完全自給化」

イケアと同じく、雇用形態のボーダーをなくしたといえば、このコストコも同様です。巨大ショッピングモールとして有名なコストコが実施したのは、管理職の役職手当以外の全社員の給与を時給換算にしたこと。

これにより、正社員・非正規雇用・パート・アルバイトはすべて同じ基準で給与を支払われることになります。さらには、時給換算となったことで、いわゆるサービス残業というのは、廃止というよりもその概念がなくなるという結果になったのです。

これはつまり、管理職というスキルを目指すことへのモチベーションのアップにもつながります。というのも、これまで正社員というだけで給与面の優遇があったのですが、この制度によって管理職にならないとその優遇は存在しなくなったからです。

そして当然会社は、そこに、管理職への登用チャンスを与えています。それは経験の有無を問わず、正社員以外の社員には正社員登用制度を、そして正社員には管理職登用のチャンスを与えるという制度です。

そして、管理職にも、家庭状況などに応じて正社員に戻ることが許されています。これにより平等かつ柔軟な人事が完成し、能力やスキル、そして意欲というものが反映する多様化された勤務形態が実現したのです。

 

アステラス製薬株式会社「Pay for Job , Pay for Performance」

時給換算でボーダーをなくすというのと逆を行くのが、このアステラス製薬のプロジェクト。タイトルの「Pay for Job , Pay for Performance」というのは簡単にいうならば、働きや結果にこそ給与は支払われるという意味です。

つまりどういうことかというと、時間は全く関係ないということ。それは、自らの置かれている立場、例えば介護や育児といった家庭の事情で、例えば勤務時間が少なくても結果さえきちんと残せば、給与はその結果に支払われるという理念です。裏返せば、ただ、だらだらと働いても給与は向上しないということ。

実際には、裁量労働制度という制度によって、自らの働く時間を決定することができ、短い時間でもきちんと成果を出せばマイナス査定が出ないようになっています。

また、職務給与制度という制度では、年齢や経験を加味せず、ただ仕事の産み出す付加価値やその難易度が給与の決定に関係することになっているのです。つまりこれは、完全なる成果主義による評価ということ。

これにより、長く勤めている、長く働いているといった、ただそこにいるだけで積み重なる実績などまったくもって何の足しにもならなくなったのです。

東レ株式会社「働きがいと公正な機会を」

無駄な労働時間をコストと考える傾向はアステラス製薬だけではなく東レにおいても同じです。しかも、アステラス製薬が無駄な労働時間を加味しないのであれば東レはさらに上を行く、無駄な労働時間はコストと考え削減が義務付けられているのです。

もちろんこれは会社のコストカットという意味もありますが、同時に社員の生き方の自由化にもつながる制度です。意味のない労働時間でも、長く会社にいることが美徳であった旧来の社会では、家族との時間や自分のための時間をいかに削るかが課題でもありました。

しかし、東レのこの考え方は、無駄な時間を使って働くのではなく、無駄なく短く働いて自分のために時間を使おうというもの。それはいわゆるワークライフバランスの考え方といえるのです。
これにより東レにおいては有給休暇の取得率が92%前後にまで向上し、総労働時間も激減することになりました。

これは、いうなれば労働者の負担軽減策です、しかし、同時に、結果を出せる働き方をしないと働く時間では評価はしてもらえないということでもあります。やはりここでも、自由という名の競争がその背景にあるのです。

日本電産株式会社「会社を上げた残業ゼロへの取り組み」

サービス残業という言葉が使われ始める以前から、残業廃止の方向に日本企業は舵をとっていました。しかしそれは、労働状況の改善や労働者保護の観点ではなく、もちろん生産性の向上でもなく、ただ単純に残業代のコストをカットしたい、つまり実質的な減給処置でした。

しかし、日本電産の残業ゼロはそういったものではありません。定時に帰らず黙々と残業をする日本社会の美徳が、世界的な水準からみて生産性の向上につながっていないという事実をもとに、残業カットで生産性を上げるという取り組みなのです。

日本電産ではこれに向けて「働き方改革委員会」という委員会を設置。そこに下部組織として、7つもの分科会を置いてそれぞれの分科会において様々なジャンルから残業ゼロに向けた取り組みを行っているのです。もちろん、残業ゼロをコストカットと位置付けないためには、残業が減ったことによる賃金の低下にも日本電産は対策を立てています。

具体的にはその分賞与をアップしたり教育費に使ったりなどですが、こういった対策は重要です。そして、この残業を減らすことでむしろ生産性を上げるという取り組みは、情報と自由な発想がものをいう働き方改革後の社会においてモデルケースとなるものであることは言うまでもありません。

カルビー株式会社「リモートワークの推進」

会社に出身せずに、ネット回線で仕事をするリモートワーク。

もしくはテレワークともいわれるこの働き方は、新しい時代の勤務形態として注目はされていますが、タイムカードの価値の高い日本ではなかなか普及には至っていません。

しかし、このリモートワークを積極的に採用しているのが、ポテトチップスで有名なあのカルビーです。そもそも、社内フリーアドレスの導入から、社内のIT化が一気に進んだカルビーでは、こういった制度導入前から、ネットワークを介した社員の交流が不通となっていました。

そこで、ならばいっそという形で始まったのがこの制度です。そしてそれは、きちんとした成果を出しています。リモートワークは、家に居ながらに働けるというものですから、育児休暇などをとっていても仕事に支障はなく、男性社員でも育児休暇を出る人が出てきたそうです。

また通勤地獄からの解放がストレスを軽減させ、仕事の能率が向上したという意見もあります。これもまた、会社には出勤するものという、従来の概念を完全に覆し、仕事の成果さえ上げれば出社しなくてもいいという自由な労働環境の提示。そこにあるのは、やはり自由という共通のキーワードなのです。

自由という名の競争をいかに生き残るか

さて、ここまでは雇用形態や社内登用制度の変革を成し遂げた企業を見てきました。
そして、そこに共通するものが、自由というキーワードに裏打ちされたフラットな競争社会の誕生であることは、皆さんもお感じになったはずです。

正社員だからとか、勤続年数が長いとか、勤務時間が長いとか、残業をよくするとか、きちんと出社しているとか。そんな、いわゆる忠誠心や会社への帰属意識などを全く否定した、成果主義の社会がそこまで来ていること実感させられる企業の変革です。

そう、働き方改革の主眼は、まさにここにあります。少なくなっていく労働力を、いかに効率よく、そして効果的に使うのか。意味のない権威付けやボーダーを廃し、どのようにして少ない労働力にシナジーを与えていくのか、結果を残せるのか。

労働者側からすれば、そんな効果的に結果が出せる労働者でなければこの理念の範囲には入らないということ。
企業はすでに変わり始めています。ですから、労働者のそういった意識の変革は、もう急務だといえるのです。

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