はじめに
政府が推進する「働き方改革」の流れを受けて、多くの企業で「副業解禁(副業奨励)」の動きが進んでいます。この動きを受けて、「副業をしたい」と考える優秀なプロフェッショナル人材が急増しています。
それでは、そうした人材を副業(複業)社員として受け入れる側の企業のメリットは、どこにあるのでしょうか?
・副業する側のメリットは分かるけれども、副業人材を受け入れる企業側のメリットが分からない
・いろんな話を聞くけれども、いまひとつ、必要性が腹落ちしない
という企業の方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
しかしながら、これからは副業(複業)社員を上手に活用できるかどうかが企業の生き残りの鍵となっていく、といっても過言ではありません。
企業を取り巻く環境変化の全体像を見渡しながら、なぜ、副業(複業)社員の積極活用が、これからのビジネスの世界において企業が生き残っていくための鍵になると言えるのかについて整理していきたいと思います。
企業を取り巻く環境の変化
複雑化する市場ニーズ、急速に進化する技術、そして、激化する競争
経済の成熟化、少子高齢化といったトレンドを受けて社会の課題は複雑化してきており、企業は、そうした複雑な課題を解決するためのソリューションを提供していくことが求められるようになってきています。そして、そうしたソリューションを実現するための革新的なイノベーションを生み出すことが求められるようになってきています。
いっぽう、技術は凄まじいスピードで進化しており、キャッチアップしていくだけでも容易な事ではありません。しかしながら、スタートアップ企業が続々と誕生し、業種の壁・国境の壁を越えて競争が激化する中、企業は、生き残るために、目まぐるしく移り変わる環境に適応し続け、価値ある商品・サービスを生み出し続けていかなければなりません。
高付加価値人材の不足
にもかかわらず、革新的なイノベーションを生み出していくためにどうしても必要となる「高付加価値人材(イノベーター、スーパークリエイター&エンジニア、ファイナンス・マーケティング等のプロスキル人材)」を採用することは、昨今、非常に難しくなってきており、希少な人材の奪い合いが起きているのです。
かといって、無理をしたり、妥協をしたりしてでも採用すればよいというわけでもないでしょう。思い切って採用してみたら思ったほどのスキルではなかったということが分かったり、実際に優秀な人材だったけれどもカルチャーギャップが理由ですぐに退職されてしまったり、というような採用のミスマッチも増えてきています。
いかがでしょうか?
御社は、激しい環境変化に対応していくために必要なプロフェッショナル人材を確保していくための体制を、しっかり整えられていますでしょうか?
副業(複業)社員を積極活用すべき理由
こうした環境の変化の中で企業が生き残りを果たしていくには、副業(複業)社員を積極的に活用していくことが欠かせません。
重要度の低い仕事(単純作業)をどんどん(低コストで)外注していくという意味での副業(複業)社員の積極活用ではありません。
重要度の高い仕事を、社内外の垣根を越えて構成された最強のプロフェッショナルチームで進めていくという意味での副業(複業)社員の積極活用です。
副業(複業)社員を積極活用すべき理由①:目的にあった最適な布陣を最速で構築できる
企業は、時代の移り変わりとともに次々と浮上してくる新しい経営課題に、真正面から挑んでいかなければなりません。こうした重たいテーマに立ち向かっていくためには、豊富な知識と経験、そして確かな能力を持ったプロフェッショナルを集めて臨む必要があります。
しかし、必要な人材をすべて「社内人材の育成」や「正社員採用」といった方法でまかなっていこうとするならば、スピードが遅すぎて、ビジネスの機会を失ってしまうことにもなりかねません。
その点、「副業」「複業」という形態であれば、優秀なプロ人材を迅速に自社の戦力として組み込んでいくことができます。経営環境は、日々めまぐるしく変化していきます。現代の企業経営においてなによりも重要なことはスピードなのです。
副業(複業)人材を積極活用すべき理由②:社内人材の成長加速化につながる
社外のプロ人材を積極的に取り込んで迅速に環境変化に対応できる体制を整えていくことは重要ですが、並行して、社内人材の育成(プロフェッショナルとしての能力向上)を進めていくことも重要です。
副業人材の積極活用には、社内人材の成長を加速化できるというメリットもあります。
副業(複業)社員と協働(コラボレーション)していく過程で、社内人材は、新しい視点や知識・ノウハウを吸収していくことができるのです。
いつも同じ社内メンバーで仕事を続けていたのでは、どうしても、社内に停滞感やマンネリ感が生まれてしまいます。刺激が少ない環境にいると、人は、無意識のうちに保守的になっていってしまいます。
成長は、未知なるものとの交流の中からしか生まれません。座学の学習で得た知識などとは違い、仕事の実践の中で生身のプロフェッショナルから直接吸収したノウハウは、実践的スキルとして、社内人材の血となり肉となっていきます。副業(複業)社員の積極活用は、どんなラーニング手法の導入よりも効果的な社内人材育成の方法と言えます。
副業人材を積極活用すべき理由③:効率的・効果的な「採用」を実現できる
加えて、副業(複業)社員を積極活用することで効率的・効果的な「採用」を実現できるようになる、というメリットもあります。
人材獲得競争が激しさを増す中、まず「副業」という形でプロフェッショナル人材に自社で働いてもらうということは、自社の魅力を知ってもらうためのきっかけとなります(実際に自社で働いてもらうことで、働く場としての魅力を実際に確かめてもらうことができるわけです)。
「副業」としての仕事にやりがいを感じてもらえ、自社の理念やカルチャーにも魅力を感じてもらえたならば、「転職したい」と思ってもらえるようになるわけです。これは、優秀なプロフェッショナル人材の採用を実現するための重要な一手となります。
また、こうした形での「副業を通じた採用プロセス」を創り出していくことで、企業側から見れば採用のミスマッチを防ぐというメリットも得られます。実際に自社で働いてもらうステップを踏むことで、スキルの確かさや、自社の理念やカルチャーとの適合性を確かめていくことができるのです。
通常の採用以上に、会社の命運を左右するプロフェッショナル人材の採用は失敗が許されないものです。副業(複業)社員の積極活用は、企業の採用プロセスを、より効率的で効果的なものに進化させていくことにもつながる、極めて重要な取り組みなのです。
とりわけ、スタートアップ企業においては決定的に重要な取り組みであると言えます。
スタートアップ企業の人材集めは一般的に非常に困難なものです。知名度も信用もなく不安定な状況にあるスタートアップに身を投じようとする人材は一般的に少ないものです。
しかしながら、スタートアップ企業こそ、既存の伝統的大企業以上にスピード感を持って、市場環境変化の先頭を突き進んでいかなければならないわけです。そのためには副業(複業)人材の積極活用が欠かせません。
時代の最先端の事業・サービスを生み出すことを目指すスタートアップ企業であればこそ、組織・人事面でも「時代の最先端の人材活用モデル」を取り込んで、既存企業が太刀打ちできない斬新な企業モデルを作り上げていくべきではないでしょうか?
おわりに
企業経営は待ったなしです。時間は価値であり、スピードの差が生死を分かつことになります。いかにして早く、求められているものを提供できるか。
これが勝負の鍵です。
そのためには、一刻も早く、力のあるプロフェッショナル人材を集めることが肝要です。そして、そのためには、一刻も早く、時代に合った新しい人材活用のモデル、すなわち副業(複業)人材の積極活用に着手し始めることが大切です。
パラレルワーカー
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