地方創生という言葉、もう何年も使われ続けていて一生達成できない神話の様になっていますよね。数々の政権やそこにまつわる人々がそれを目指して様々な提案をし、結果出来上がっているのが今の一極集中の日本だと考えれば、まさに神話レベルのお題目としか言えません。と、言うのが世間一般の考え方。しかしそれは本当でしょうか。
そして、一極集中の原因となっている、都市に出ていくことが素晴らしいことだという日本の価値観、それも疑わずに享受してよいものなのでしょうか。今回はそんな地方創生とそこにパラレルキャリアという概念がどうかかわっていくかについて迫っていきます。
日本は本当に一極集中なのか
まずは本当に日本は一極集中なのか、そこから考えてみたいと思います。
現状はまさに一極集中といえる
今現在の状態を、時間軸で切り取れば確かに今日本は一極集中の状態にあるといっていいでしょう。現実問題として、東京に日本の人口の10%が住んでいるわけですから、これを一極集中でないといってしまうわけにはいきませんよね。しかもこの状態は、もはや江戸時代から続いているといっても過言ではありません。
近世に入って地方の人口減少が顕著になっていったことで、過疎地域や限界集落など、地方の人間はどんどんと減少し、さらに日本全体の人口減少も追い打ちをかけています。東京と地方山間部を見れば、間違いなく一極集中になっているのです。
しかし、一極集中は改善されつつある
ところが、この一極集中は今まさにどんどんと加速しているかといえば、そんなことはないのです。総務省が住民基本台帳を基に算出した2015~2017年における人口増加に勢いのある自治体ランキングでいうと、トップ10に東京都の自治体は稲城市と調布市しか入っていません。
もちろん増加数そのものでいえば上位は東京都が独占しますが、それは母数が大きいので仕方ないものです。この原因として細かなものは色々考えられますが、やはり一番大きな原因となっているのは、交通や物流の速度が大幅に上昇したということ。
いまや東京福岡間でも飛行機で2時間以内、大阪東京間なら新幹線で2時間半でいけるのです。この速度の上昇こそが、地方大都市を拠点として東京メインの仕事ができる環境を作り出していて、東京一極集中は解消されつつあるのです。
パラレルワークと地方創生
速度の上昇が東京一極集中を解消しつつある。
そんな中で、パラレルワークと地方創生について考えるならば、そのカギになるのはやはり「速度」です。
ネット環境における速度は「光速」
パソコンのスペックや通信回路の速度にもよりますが、ネット環境における速度というのは基本光速です。データの交換や痩身という物が、いわゆる電波や光回線で行われているのですから、その表現で間違いはないと断言していいでしょう。
つまり、ネットにおける速度とは人間が到達しうる最高速度だということです。もし、速度という物が、地方創生のカギとなり東京一極集中型の社会を改善するものだとしたら、これほど大きな要素はありません。高速は時間を凌駕するものです。所要時間でいえばゼロなのですから。
パラレルキャリアで潤う地方の小都市
こうなってくると、もはや地方創生は地方大都市の話ではなくなります。現在、日本のネット環境でいえば、かなりのへき地や過疎の村、限界集落に至るまで光回線が引かれている場合が多くなっています。
つまりそれは、これまで、速度という点で東京近郊や地方大都市には絶対かなわなかった過疎の村がそういった場所と対等に戦える位置に存在するということです。そうなれば、仕事という概念上のネットワークはもはや場所を選ばなくなってきます。地方のために本業を地方で持ち、副業として東京に軸を置いた仕事を選択することも、東京と地方とに拠点を二つ持ってパラレルキャリアとなることも、もはや難しくはありません。
仮に、拠点としての仕事を地方の山村において、東京の仕事をダブルワークとして持つとしましょう。そうなれば、もちろん地方の労働者が増えるという事のみならず、地方にはその人の収入全てにかかってくる税金が落ちていくこととなります。もはや地方交付税に頼らないビジネスモデルだって、夢ではないのです。
大都市の役割が物流のみになる未来
このように、ネットの充実による地方回帰が始まっていけば、もはや大都市の役割は減少の一途です。これまで東京などの大都市が反映して一番の原因は、そこに、ビジネスに必要なすべてのものが集まっていた方が効率が良かったからです。しかし、その前提が崩れていけば、そうではないのです。
ネットによって、その世界の中で仕事をする人が増えれば「労働力」「能力」「資金」「資源」の中で、ネットの力で東京とオンタイムでつながれないのは「資源」だけです。それ以外の全ては、すべて「光速」で「時間コストゼロ」でネット回線を通じてつながることができますよね。
となれば、もはや大都市の役割というのは、物流の拠点として、円滑な物流のハブとなっていくだけになります。大都市=大物流拠点。ただそれだけの役割になってしまう未来は、それほど想像に難いものではないのです。
パラレルキャリアが変える日本の未来
そんな未来に向けて、パラレルキャリアの役割にはどんなものがあるのか。最後にそれに迫っていこうと思います。
一極集中打破の最後の敵は『価値観』
これまで考えてきた未来予想図は、ある意味希望的観測に基づくものです。というのも、現実問題として、大都市の持つ魅力には、仕事だけではなく住環境としての魅力という物も圧倒的に存在しているからです。大都市生まれ大都市育ちの人にはわかりにくいかもしれませんが、地方出身者にとって大都市の利便性は蜜の味です。夜中に小腹がすいた時、ちょっと歩けばそこにコンビニがあって、少し足を伸ばせば24時間営業の牛丼屋があるという住環境は夢のような環境だということです。
さらには、若者にとっての大都市というのは、やはり今もあこがれの地です。地方出身者の方ならわかると思いますが、10代の頃や20代の前半頃までは、意味もなく理由もなく、東京で生活したいという欲求があったはずです。
じつは今、地方への人口分散を妨げている一番の原因が、この『価値観』。田舎<都会という非常に単純で、それだからこそ打破しづらい子の価値観こそが、一番の障壁となっているのです。
自由な価値観それがパラレルキャリアの原点
しかし、ここでパラレルキャリアという存在について考えてみましょう。パラレルキャリアとは、本業と副業という区別をせずに、複数の仕事を持ちながら、どちらも自分の人生において欠かせないものとして認識できる、そんな人たちです。
それは、働き方改革における副業の推進やリモートワークの推進などのさらに先にある生き方といえます。そう、もともと、パラレルキャリアというのは「常識にとらわれない自由な発想でよりよい人生を生きる」そんな生き方だったはずですよね。
そんなパラレルキャリアにとっては、東京へのあこがれなんておかしな話に思えてくるはずです。若いのだから都会に出て経験するべきだ。とか、東京はなんとなく夢があふれる憧れの街なんだ。とか、田舎はかっこ悪くて都会はかっこいいのだ、とか。
本業一本に絞らず、副業をただの副収入とせず、常識にとらわれずに生きるパラレルキャリアの自由な価値観の前では、少し滑稽にさえ感じられるものではないですか?しかも、新しい働き方に根差したパラレルキャリアに、都市と田舎の差なんてほとんどないわけです。パラレルキャリアこそ、その最後の障壁である『価値観』を砕く存在だと思いませんか?
新しい価値観の創造、それが日本を変えていく
今、パラレルキャリアを持って働いている人は、政府の思惑によるでなく、自らの意思でやっている人たちが大半です。つまり、誰かから与えられた新しい価値観を享受している人たちではなく、自分たちの手で新しい価値観を創出しようとしているパイオニア的存在でもあるというわけです。
そんな人たちだからこそ、この日本の地方創生に資する新しい価値観を生み出せるはずです。その方法は様々あるでしょう、地方に住んで働きながら東京での仕事もこなしていることで、地方の魅力をビジネスとして都会に発信することもそうですし、他にもたくさんあります。
ただ単に、東京で生活するより、生活費の面でコスパが断然いいことを身をもって証明するだけでも良いでしょう。そんな様々な観点で、特にそれを強調して生きていくのでなくとも、新しい働き方と生き方を先導するパラレルキャリアを持つ人が地方に住んで働くということの価値観を提供できれば日本は変わります。
もうすでに、地方に居ながらに東京と変わらない仕事ができる素地はあるのです。あとはいかに価値観が変わっていくのか、いまの都市偏重の価値観に代わる新しい価値観を提供し、そのコンセンサスを得ることができるのか。魅力を提示できるのか。そこに、日本の未来はかかっているといっても過言ではないのです。
地方創生が変えていくもの
もし地方創生が実現し、人口の平均化が起これば、間違いなく様々な利益があります。その一番の物は、なんといって少子高齢化の解消と、労働人口の減少への歯止めです。というのも、これまでコスパがかかって仕方がなかった田舎暮らしは、もはや都市に比べて想像もできないほどコスパのかからない生活を営むことができるようになっているからです。しかも土地は大いに余っています、値段も安い。
現在の社会において、子供を得ることの最大の障壁がコストだとしたら、その部分は大きく解消されますし、待機児童問題も、人口が推移すれば大きく変貌を遂げるでしょう。何せ、保育園にできる土地は山ほどあるのです。そんな、より快適な日本社会の最初の一歩を刻むのはもしかしたらパラレルキャリアを持つ人たちかもしれない。
なんとも愉快で痛快な出来事だと思いませんか?
パラレル
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