最近になってテレビや雑誌、ネット上のメディアで目にするようになったキーワードの一つに「複業時代」というものがあります。「副業」の誤字じゃないの、と思った方も多いかもしれませんが、複業でもあり副業でもあるのがこのキーワードの奥深いところです。どういった意味があり、今後の展望はどうなっているのか、詳しく見ていくことにしましょう。
昭和から最近まではずっと、「学びに20年かけ、その後仕事に40年かけ、最後は年金で15年暮らす」ということが人生の一つのモデルとされてきました。ところが、インターネットを含む情報技術は情報の伝達を急速に早め、技術革新とそれが普及するスピードは過去に例を見ないくらいに上がってきています。そのため世の中の変化も早く、「仕事に40年」とはいうもののそもそも企業が40年間続くということが誰にも保証できなくなってきているのです。
それだけではなく、技術の革新は人間が仕事を奪われる可能性も拓いています。SF上の話ではなく、実際にスーパーではセルフレジの導入によってレジ係の人数が減ってきていますし(まだしばらくは無人というわけにはいきませんが)大手銀行などでもAIを利用したシステムの導入で事務方の人間を減らし、経費を削減する動きが出てきています。たとえ40年間企業がもったとしても、その中でまた他人やAIと正社員の椅子取りゲームを行わなければならないというのがこれからの時代です。
一度入ったコースから外れてしまえば、一つの仕事だけをやってきた人間は非常にもろく、やり直しが利かず困窮してしまうでしょう。
さらにそのうえ、医療技術も進歩し平均寿命が延びた現在、余生に当たる「年金で15年間暮らす」部分が実際には30年間近くになっており、なおかつ少子化のあおりを受けて年金自体の支給額も先細りとあっては退職後もある程度仕事を続けざるを得ない時代になっています。完全にこれまでのライフモデルが崩れてきていると言って良いでしょう。
こうした時代に生き残るためには、一つことに打ち込み専門家となるのも良いのですがいくつかの仕事を並行して行う、「複業」をする力が求められています。メインの仕事の片手間にするのが副業ですが、メインと同じくらいの割合で、現職と並行して行うのが「複業」と呼ばれます。収入の入り口を複数持つことでどれかが停滞しても即座に困窮はしない、リスク分散型の働き方と言えるでしょう。
もちろん、ある程度業務は隣接してくることにはなります。モデル業をこなしながら会社員というわけにはいきませんし、鮮魚店を経営しつつ長距離ドライバーは出来ないでしょう。
しかし、英和翻訳の仕事が出来るなら英語の講師は現職 平行で可能でしょうし、どちらか一方、あるいは両方を在宅で行えばさらに現実的な働き方になります。
実際、インターネットと複業の相性はとてもよく、通信環境が整備されてきたこともあって在宅ワークの広がりは近年大きく加速しています。通勤ラッシュの緩和や通勤で発生するエネルギー・排ガスなどへの環境的な配慮からも在宅ワークを推進する動きもあるため、複数の企業で事務の仕事を請け負うなど、「仕事は一つだけれど勤務先は多数」といった働き方も可能になりつつあります。ある分野の専門知識を生かしてその分野他社の社外顧問に就くなど、企業を股にかけて複数の名刺を持つのも今後は当たり前となっていくでしょう。
以前であれば「仕事をいくつもしている」という人は「貧乏で仕方なく」あるいは「得意なものがない器用貧乏」と見られがちであり、「人間、一つのことを極めるのが大事」といった価値観からはやや下に値踏みされることが多いものでした。
しかし終身雇用が崩れ、企業や仕事自体の寿命が縮み、人間の寿命は逆に延びてしまった現在では「時代に適応し、ニーズのあるところで仕事できるフットワークの軽さ」が最も求められる能力と言えます。人によってどういった系統の仕事をメインにするかは異なりますが、共通するのは「PC、インターネットを駆使する」必要があるところです。
一つの勤め先に縛られず、全国あるいは世界中を仕事場として使うためにはインターネットが欠かせないため、最低限の情報通信に関する知識と使い方は学んでおいて損はないでしょう。とくに重要となるのが年金には頼れない60歳以上、高齢となってからの働き方です。力仕事には限界があるため、PC一つである程度稼げるスキルをその時所持しているかどうかで生活のクオリティはだいぶ変化します。
ブログ、記事ライティング、アフィリエイト、動画作成、スタンプ作成、シナリオや脚本の執筆、翻訳、文字起こし、プログラミング、ライブカメラを使った講師業等々。
複業をこなす可能性は無限といって良いほどに存在します。単純な時給で見るよりも、自分にとって継続しやすい、歳を取っても出来る副業をいくつも見つけておくことがこれからの時代を生き抜くことに役立つでしょう。